「空間思考能力」とは、2次元・3次元の対象をイメージとして図形的に把握し、操作する能力を
総体的に表したものです。大きさ・形状・位置を始め、複数対象間の関係、分解と合成、また運動
の軌跡を脳内で処理する力であり、基本的な図形認識だけでなく地図や図面の読み取り、更に自ら
の手でイメージ構築するスキルにまで繋がる「基底的能力」です。
この空間思考能力が数学の力と相関することは、既に研究の成果として明らかになっていました。
また空間思考能力は訓練により向上することも分かっていたのですが、空間思考能力の訓練が直接
に数学の能力を向上させるのかどうかは判明していなかった。それを実際に検証した研究が、上に
ご紹介した”Spatial Training Improves Children’s Mathematics Ability”です。
結論:空間思考のトレーニングは子どもの数学的能力を向上させる。
40分のトレーニングで計算問題のスコアが5%向上
この研究は基礎的な計算スキルの習得途上にある6歳~8歳の子どもを対象に実施されており、次
のような形で行われています。
- 58人の参加者を2つにグループ分けする。
- 1度目のテスト。
- 別の日に、40分の空間思考のトレーニングを行い、直後にもう1度テスト。
空間認識のトレーニングは一方のグループだけが行う。
(もう一方のグループはクロスワードパズルを解いた。)
この結果、空間思考のトレーニングを受けたグループは計算問題のテストで平均5%の成績向上を
示したというのです。わずか40分のトレーニングで5%の向上。勿論、論文には継続的な訓練に
よって更なる効果が見込めると積極的な評価が述べられています。
空間思考能力こそ知力の鍵
この研究では、いわゆる「虫食い算(「3+_=8」等の形で「_」を答える問題)」のスコアに
顕著な改善があったことが報告されており、空間思考能力の向上をその原因として解釈するなら、
これは「図形的な合成・分解」により計算するイメージが強化されたのだと見ることができます。
この実験で行われたトレーニングは「2つの平面図形のピースを見て、この2つを合成してできる
図形を選択肢の中から選ぶ」というものでした。数を量として理解し、またより小さな量の合成と
して把握する。当協会が数論理能力の基礎として提唱するメソッドの本旨に、本研究の結果は合致
するものと言えるでしょう。
勿論「空間思考能力」はただ計算能力に寄与するのみではなく、その重要性については現在も様々
な研究が重ねられています。当協会は各分野での研究成果を基に、教材やプログラムの開発・改善
に取り組んでいます。