創造性のもととなる「思考力育成」をテーマに幼児教育、小中高生研修、企業研修を行う一般社団法人です。


2021年12月07日(火)、オンライン対談イベント「子どもの思考を言語化する~「論説紙芝居国語」と国語教育の革新~」が開催されました。ピグマリオンメソッドの開発者である伊藤恭先生と「論説紙芝居国語」の制作を手掛ける高知工科大学教授・中川善典先生、また同紙芝居制作に参加し、「ピグマリオン論説紙芝居国語」のレッスンを担当する当協会の藤野幸彦の3者対談となった本イベントでは、伊藤先生の読書経験談をスタートに「国語力」とは何か、そして子どもたちの国語力を伸ばすために必要な取組みとはどのようなものかが大いに論じられました。合わせて「論説紙芝居国語」からのアプローチを紹介するとともに、ご家庭での取組みについてもご案内するなど、盛りだくさんの内容となりました。当日にご参集下さいました皆様に改めてお礼を申し上げます。

定員を超えるお申込みを戴き、「国語力」教育への関心の高まり、また子どもたちの成長を願い日々心を砕いておられます皆様の思いの大きさ、強さを改めて感じております。今後もよりよい教材とレッスンの実現に向け、更に尽力して参る所存です。
どうぞ皆様には引き続きのご厚情を賜りますよう、宜しくお願い致します。

本ページは、対談イベント中にお寄せ戴きましたご質問に対する回答の掲載ページとなっております。掲載にあたりましてご質問者様のお名前を匿名化し、またご質問の関連性を鑑みイベント内でご質問戴いた順とは異なる順での掲載となっておりますことをご了承下さい。

当協会では皆様からのお問い合わせを随時お受けし、回答を差し上げております。
本ページ内の記述内容、またその他にも「国語教育」のあり方について、また「ピグマリオン論説紙芝居国語」についてなど、ご質問がありましたら上記の「お問い合わせフォーム」からお気軽にお問い合わせ下さい。


【オンライン対談イベント「子どもの能力を伸ばす夏休みの過ごし方」Q&A】

Q.1 【関心を広げ、国語力を高めるために】
読書の大切さが身に沁みました。
質問ですが、子どもを読書好きにしたいと思いますが、先生方が読書を好きになるきっかけとなった本やできごとはありますか?
また、様々ことに関心を持つためにはどのような働きかけが良いでしょうか。恐竜や電車等、特定のことには関心を示しますが、多くの分野にも関心を広げてほしいと思います。

A.
 関心を持ち自ら学ぶことができるような「好きなこと」があるということ、まずは素晴らしいことであると思います。子どもさんが自ら学びを深めて行かれるならば、その深まりを基に他の分野のことも考えることも次第にできるようになることでしょう。自分の知識に引き付けながら、新しいものに触れ、学んでいくということです。例えば、年代ごとに栄えた恐竜の姿の変化に気付くことで「進化」というプロセスを自然と知っていくことができますし、逆に「進化」という言葉を知った時に「恐竜の進化」を具体的なイメージで捉えることもできるはずです。
 このような意味で、知識や関心をあまり分野ごとに断絶したものと捉えないこと、既知のものをきっかけに未知のものを考え始めるという点を意識し、そのような思考を促して戴くことがよいでしょう。「恐竜」は「進化」だけでなく「環境」や「生態系」、また化石の発掘などのトピックから「地層」といったテーマとの関連が予想されますし、「電車」は「電気」や「速度・時間」、「地理」、「輸送」などの言葉に繋がっています。子どもさん自身にはこのような繋がりが見えにくいケースも多くありますので、「自分の関心に引き付けて考える」ことができるようガイドすることが大人の役割になります。
 読書との関連で言えば、「これを読みなさい」などと子どもさんの行動や興味・関心をコントロールしようとするのではなく、周囲にあるたくさんの学びのタネに気付き、子どもさん自ら広げていくことができるよう、お声掛け戴くことが望ましいアプローチです。その上で、何を知っているか、何に興味・関心を持っているかということ以上に、学びに向かう姿勢、学びのプロセスを大いに褒め、励まして戴くことが肝要であるとお答えを差し上げます。

Q.2 【子どもが自分から本を読む習慣形成】
この紙芝居のように途中で展開に気付くという能力は、絵本をたくさん読むことで身につくのでしょうか。今は絵本を読み聞かせるだけですが、親が絵本を解説したり、絵本について話したりする機会を設けた方が読解力がつくのでしょうか。
註:当日、イベント内では「論説紙芝居国語」の新型教材として物語の展開把握を扱う説話文を紹介していました。

A.
 いわゆる「読み聞かせ」の場合、子どもさんにとっては「本の内容」を楽しむのではなく「親子の時間」が楽しいという具合になり、自ら学び知識を深めるという行為には繋がっていない可能性があります。勿論、親子で楽しい時間を過ごすということは素晴らしいことなのですが、場合によって子どもさんが「本の内容を気にも留めていない」というケースもありますので、学習という観点からはやはり子どもさん本人で読むことが望ましいという具合になります。ただ、お子様は3歳でらっしゃるとのこと、親子の時間としての読み聞かせの方がまだまだ楽しいということもあろうと思います。それ自体は決して悪ではありませんので、やがて一人で読んでみようか、というお気持になられるのを少し待たれてもよいと思います。やがてその時には姿勢の変化を大いに褒め、励まして戴くことで自然と読書習慣を身に着けていくことができるのではないでしょうか。
 子どもさんたちが「本を読む」という行為もまた、Q.3にありました「書く」という行為と同様に動機なしには始まりません。そしてその動機とは「自分の知っていることが本に書いてある」という喜びと、「本から学んだことに現実の世界で出会う」喜び、この2つの喜びに強く紐づけられているように思います。例えば幼稚園への通園中に毎朝見かけていた植物を図鑑の中に見つけた時、また逆に図鑑で見知った草花を公園の片隅に見つけた時。このように「本と現実が結び付く」経験は、知識を得ていく喜びそのものでもあります。是非「凄いね!よく知っているね!」と声をかけ、その喜びを更に大きなものにしてあげて下さい。きっと子どもさんは、もっとたくさんの知っているものを本の中に探し、また本から知ったものを日々の生活の中で探すようになることでしょう。その繰り返しの中で、深まりまた広がっていくものが知識であり、世界を捉えるための感性もまた同時に養われていきます。「国語力」とは、詰まるところその結果として発揮される能力に過ぎないようです。発見の喜び、知識を得る喜びを共有し、褒め、認めながら学ぶことの楽しみへと誘って差し上げて下さい。
 加えて、子どもさんの読書経験のスタートには周囲の大人の影響が大きいことを知っておいて戴きたいと思います。家族皆が当たり前に本を読む家庭で育った子どもさんは、誰に言われることもなく気が付けば本を開いていた、というケースが多くあります。大人の真似をして育つのが子ども、ということで読書の習慣と環境を作られることもよい働きかけになるでしょう。

Q.3 【文章の展開を掴む能力を磨く方法】
この紙芝居のように途中で展開に気付くという能力は、絵本をたくさん読むことで身につくのでしょうか。今は絵本を読み聞かせるだけですが、親が絵本を解説したり、絵本について話したりする機会を設けた方が読解力がつくのでしょうか。
註:当日、イベント内では「論説紙芝居国語」の新型教材として物語の展開把握を扱う説話文を紹介していました。

A.
 展開を把握する能力は読書経験により磨くことができるものではありますが、ただ「たくさん読む」というだけでは必ずしも能力の成長には繋がりません。例えば、絵本の読み聞かせをされる場合でも、展開の上で重要なポイント(大人であれば「伏線」と呼ぶものや、また登場人物たちの感情が大きく動く場面など)をしっかりと強調して読むことで、それを聞く子どもさんは自然に物語の構成や展開を意識することを覚えていくことができます。また、子どもさんには物語の構成や展開の面白さ(終盤のどんでん返しや、いわゆる「お約束」のようなパターン)については感じ取っているものの、自分がなぜそれを面白いと感じているのかについては言語化できない、というケースがしばしばあるようです。「アンパンマン」のお話の中で時おりよい行動をとるバイキンマンには「いつも悪いやつなのに今回だけは善いやつ」という普段のバイキンマンを知っているからこその面白さがあるわけですが、こうした面白さについて、大人の側から言語化することで子どもさんの中でも意識化が進むことでしょう。これらは文章力の成長に関わることですが、勿論、文章の展開に関する型を身に着けることは読解力の成長にも繋がります。
 このように見ると、感想を共有して感想の言語化をサポートすること、また子どもさんの意識が物語の展開に向くよう読み聞かせの演出を工夫する、というあくまで「子ども主体」の活動をサポートすることが大人からの働きかけの範囲になるかと存じます。そうした範囲の中で「絵本についてお話しする」ということは大いに意義あることですが、「解説」という言葉がそれ以上の指導的意味を含んでいるとすれば、これはやや行き過ぎた姿勢ではないでしょうか。

Q.4 【文章の書き方、表現力を培うには】
文章の書き方、は、どのように身に付くものでしょうか。どのように教えるのが効果的ですか。ゆりちゃん多読、ですか?センスもあると思いますが、ヒントをいただきたいです。

A.
 「書く」という行為に限りませんが、自ら行動するため、また何かを身に着け上達していくためには動機が必要です。親戚など近しい大人の方、またお友達などにお手紙を書くなど、「上手に書きたい」と思うことができる環境があれば、教えずとも子どもさんはそれまでの学びから相当の能力を発揮されるものです。その上で、文章は必ずと言ってよいほど「読み手」の存在を前提に書かれるものですので、この点を意識できるようアドバイスをして戴くのがよいでしょう。例えば「ビックリする出来事があったので、おばあちゃんにも驚いて欲しい」と思うならば、どんな風に書けばそのピックリが伝わるだろう……というような具合に、「どう読まれるか」を意識することが文章力全体の基礎になっていきます。加えて「書き手」としてどんな言葉を使うのか、ということについても意識できるようになると、力が磨かれていきます。普段は使わないような丁寧な言葉、気取った言葉を使う時、子どもさんは自分がそうした言葉を使うことができる存在だということをアピールしたいのかも知れません。そうした努力を大事に、励ましながらどんどん書いていって欲しいと思います。
 文章を書くということは書き手と読み手の視点を想定する必要がある行為ですので、このように「読まれ方」や「何者として書くのか」ということが意識できないままでは「独りごとのような自分の感想」しか書けない、ということになってしまうでしょう。これらは文章に限らず対話・会話にも当てはまる事柄ですので、「聞かれ方」や「話し方」を適切に判断できるよう、周囲の大人がしっかりとした言葉遣いを意識し、好ましい例を子どもさんに見せていくこと、またそうした姿勢で日頃の子どもさんとの会話にも臨むことがやがて必ず文章力の成長として現われてくることでしょう。

Q.5 【絵本を読み聞かせる際の心掛け】
絵本を読み聞かせる時に心掛けると良いことはありますか?
自分から進んで本を読む子になって欲しいのですが、あまり進んで読んでくれません。

A.
 読み聞かせの際に心掛ける事柄としては、Q.3でもお答えしておりますが感想を共有し、その意識的な言語化を助けること、また物語の構成や展開に子どもさんが意識を向けられるよう、読み方を演出して工夫することが挙げられます。自ら進んで本を読む習慣の形成についてはQ.2への回答をご参照下さい。読書の喜びを大いに味わうことで、その喜びを動機に子どもさんたちは自ら学ぶ姿勢を培うことができます。そのためには読書という行為の価値、知識を得ることの素晴らしさを知ることができるよう、周囲の大人が励まし、褒め、認めていく必要があるでしょう。子どもさん方の多くが非常に強く自身の親を愛していること、それだけに親の反応が子どもさんたちにとっては何よりの動機づけとなることを強調しておきたいと思います。

Q.6 【お勧めの絵本や書籍】
幼児や小学生向けのおススメの絵本や書籍はありますか。

A.
 「中川博士の論説紙芝居国語」を強くお勧め致しますが、それ以外でとなりますと一概にお答えすることが難しく、申し訳ありませんが具体的な書名については言及を控えさせて戴きたく思います。ですが幼児から小学生向けと幅広い年代を視野に入れるということであれば、書籍については図鑑的要素(イラストと簡単な説明)と辞書・資料集的要素(より詳細な解説)の両方を備えた本をお選び戴くのがよいでしょう。最初は図鑑的要素を自分で、資料集的要素は大人と一緒にという読み方をし、年齢とともに全てを自分で読む、という具合に進んでいくことで、予備知識のある内容を学ぶという構図ができ多少難しい内容でもどんどん読み進めることができます。少し背伸びするくらいの方が能力の成長に繋がるとお考え下さい。
また、様々な中学校の国語の中学入試問題を一冊にまとめた本が毎年市販されておりますので、これを一冊購入され、お子さんの興味にあう本を探されるとよいと思います。入試問題には出題者である先生方からの「こんな文章に触れてほしい」というメッセージが込められていることも多く、実際、優れた文章が多く見つけることができます。きっと素敵な一冊に出会えるはずです。

Q.7 【登壇者の読書体験を振り返る】
男児の母です。図鑑、最強王シリーズ、サバイバルシリーズなどは自分でも読むのですが、物語のようなものは、なかなか自分から手に取ってまで読もうとしません。漫画なら鬼滅など3回も回して読むほどです。男児の思考なのか興味あるもの、結論、結果の明確なものは強く惹かれるようなのですが、強者以外の登場人物の気持ちや展開を追いながら自分で読んでいくのはまだ面倒な様子です。親に読まれるのは大好きです。先生方が小説などに興味を持って読まれるようになったのはいつぐらいから、どのようなきっかけでしたでしょうか。小さな頃お好きな本はありましたか。

A. 
 物語の構成や展開を学ぶ、という意味では漫画もまたよい学材であり得ます。ですが『鬼滅の刃』のように物語自体が長く、またスペクタクル要素やアクション要素を強調する作品は、こうした目的にはやや不向きでしょう。例えば『ドラえもん』など、1話1話が短く、かつストーリーの展開が明確な作品を読むことが同じ目的のためには望ましいと存じます。これはアニメーション作品等を活用する際にも同様です。物語の展開を把握して楽しむことができるようになれば、文章も楽しむことができるようになります。
 こちらの回答は藤野が担当した文章ですが、小学校に入学する前から漫画を読み、入学後は図書室に配架されていた子ども向けの「シャーロック・ホームズ」や「ズッコケ3人組」のシリーズから読み始めました。それ以外でもいわゆる「学習漫画」で日本史や世界史、科学に関するものは一通り読んだと思います。読み始めたきっかけについて明確な記憶はありませんが、両親が漫画も小説も読んでおりましたのでその影響ではないでしょうか。これもその影響なのか、ある程度読めるようになった後は漫画・小説という媒体の違いには拘らず学校で目についたものを濫読していた気がします。「好きな本がある」というよりは「本が好き」という感じでした。
 それ以前の幼稚園の頃については、絵本よりも図鑑が好きで『21世紀子ども百科』など読んでいたと記憶はしているのですが、双子の弟と過ごす時間が非常に長かったため読書量は多くなかったと思います。代わりに兄弟間の会話量が物凄いことになったりなどしつつ、2人でLEGOや積み木、プラレールなどで遊んでおりました。

Q.8 【読解力UPのために親にできることは?】
現在年少娘がおります。絵本は大好きで毎日1〜2冊ですが読み聞かせをしていて、自分でもよく絵本を読んでいます。
読解力をつけるために、対話が大切なことがわかりました。
今後は絵日記を書いたり子供新聞を読んだりといったこともはじめようかと考えていますが、他に読解力UPのオススメ方法や親がしてあげられることがあれば教えていただきたいです。

A.
 絵日記を書くこと、子供新聞を読むこと、いずれも国語力の成長に繋がるよい取り組みであると思います。絵日記については「読み手」の存在(本来「日記」とは誰かに読んでもらうことを前提に書くものではありませんが、それでも「読む自分」は必ずいるはずです)を意識し、伝えたい内容をよりよく伝えるため工夫することを促して戴くとよいでしょう。「今日は○○をした。楽しかった。」と書くのと「今日は楽しいことがあった。○○だ。」と書くのとでは、読み手に与える印象も違ってきます。子供新聞については、掲載されている内容とお子さんの知識や経験が結び付く機会が増えるよう、周囲の大人も同じ新聞に眼を通して一緒に紹介されている場所(それに似た場所でも勿論構いません)を訪ねてみたり、疑問に思うことを調べたりされることをお勧めします。読んだ内容が他と繋がっていくことで知識はより広く深いものとなり、初めて触れる内容も理解しやすくなっていきます。
 ご息女は年少であられるとのこと、たくさんのことを経験することが重要なのはどの年代でも共通ですが、文字の世界に入る前だからこそ、本の中にたくさんの「知ってる!」を見つけて読書の喜びが得られるよう、多くの刺激を外の世界から受け取って戴きたいと思います。道端の草一つとっても名前のあること、建物を一つ造り維持するだけでもたくさんの人の手が関わっていることなど、意識的にお声掛けされることで世界に対する認識も変わり、洞察が備わってくるのです。勿論、すぐに理解できることではないのですが、それでもこれらは「放っておけばやがて分かる」という類のものではありません。完璧には分からずとも子どもさんたちは必ず何かを大人の言葉から受け取り、本人なりに理解しています。そのように心がけ、過度に子ども扱いされずに接して戴くことで、日常の様々な活動がよい学びの場となることでしょう。


*この他にも共感・賛同のメッセージを多数お寄せ戴いております。今回はご質問に対するご回答ということで省略させて戴いておりますが、改めて篤くお礼申し上げます。

今後とも皆様のご厚情を賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。

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